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素顔になっちゃう 涙と笑い2

芒(すすき)の季節に
 俳句をひとひねり  

「空薄く芒が原に風の浪」 笑子

最近の句である。ちなみに笑子はわたしの俳号だ。
「空」ではなく、「雲」がいいのでは…といわれる方もいる。
が、わたしには「空」のほうが、今の気持ちにそってくる。

あの空の下に雲があり、
あの空の上に果てない宇宙がある。0506_316


空という薄い膜によって、地球は覆われ、
紫外線など、宇宙から届く幾多もの放射線から守られている。
そのことに対する畏敬の念に似た驚き。


踊りの仲間が、いま闘病中だ。彼女がわたしたちに姿を見せなくなって、10ヶ月。
20数年の間、レッスンで汗を流し、舞台に立ち、泣き笑い、時に言い合った。
それだけに、ぽっかりと穴があいたようで、淋しいというより、悔しい。
肉体の限りを否応なく知らされたからだ。

母の誘いで、短歌を始めた。
彼女のことを歌わないでいられなかった。


陽はゆがみ窓に葉裏くらくらと風吹くままに影は踊れる
 (9月スタジオの窓から見えた桜の梢を見て詠む)

悪戯な黒南風(くろはえ)ふらり足を止めひとついいかと影を吸い込む

アマゾネスと誇りし殻を脱ぎ捨ててひとり影つれ紗羅の樹の辺へ

桜餅のごとき顔だと笑いあう紗羅の淵へと旅立たずとも

日は燃えて日は高々と大河にてナーガの叫びに乗るや君よ

素顔になっちゃう 涙と笑い 1

――流すなら血よりも涙 (イタリアのことわざ)――
 10歳の少女は
   「泣くもんか、泣くもんか…」と唱えた。

「涙を流すことは、ストレス解消になる」という。
 それなのに、涙をこらえ、素の顔を見せまいとしたときがある。小学校3年生、10歳のときである。

 ある日の昼休み。(季節は覚えていない。)白いチョークをもち、黒板に向かい何かを書いていた。と、一人の男の子が近づき、スカートをずり落とそうとした。

 振り向きざまに相手を睨む。とたんにパシッとびんたが飛び、頬に痛みが走った。殴られたことが悔しくて、ものもいわず席に向かったが、無視したことがいけなかったのか、少年は火に油を注がれたようになり、席についたわたしの頬を何度も叩いた。

 ジンジンとした熱さが頬を包んだが、なぜか涙はでてこなかった。ただただ、少年を睨んでいただけだ。

 この騒動に、気づいた子は少なかった。席が窓際の前のほうだったこと、昼休みで多くの子が運動場に出ていたからだ。それでも、居合わせた子たちがいる。彼らは一様に貝のように押し黙り、少年に注意する子はいなかった。

 運動場から戻ってきた子達の中で、ざらついた教室の気配を感知した子もいたようだが…。

 ぽつんと、取り残されたようで、孤独だった。「あ~ひとりなんだぁ」と、このとき初めて強く意識したような気がする。「仲のいい子でも助けてくれない」という思いに襲われた。

 午後の授業が終わるまで、机の一点を見つめ、「泣くもんか…、泣くもんか…」とつぶやいていた。不思議なのだが、わたしを殴った少年を「憎い」という思いはなかった。

 少年は乱暴な子、粗雑な子といわれていたが、それほど悪い子だと思ったことはなかった。生い立ちを知っていたからかもしれない。たくさんの兄弟がいて、お父さんを早くに亡くし、ボロや屑を集めて家計を助けていた。丸坊主で小柄な体、大きな目がクルクル動く、やんちゃな顔の子だった。給食を残すと、「残しちゃだめだ」と小突かれたこともある…。


 あの日、ようやくランドセルを背負い教室を出た。家へ帰るのがいやだった。母はわたしの顔を見たら、きっと少年を責めるだろう。気が重かった。子供の内輪もめに、大人が介在することを、本能的によしとしなかったからだ。

 家族に顔を見られまいとうつむき、背を向けて家に入った。が、紫色になった頬を隠しとおすのは無理だった。母は驚き、その日のうちに学校へ連絡を入れた。

 翌日、先生は少年の名前を伏せて、「このようなことを起こさないように」とみんなに向かって注意した。それで一件落着。少年はその後、わたしに悪戯をしてこなかった。時どき、彼はいまどうしているのかな?と思うことがある…。

 それにしてもあの時、涙がでてこなかったのは、なぜだろう。20歳を過ぎてから、ドラマを見て涙したり、歌を聴いてほろっとしてみたり、30歳すぎて、「涙の数は女の勲章よ」と強がってみたりしているが…。

 「子供の世界に生きている」という、潔癖な少女なりの、自負のようなものがあつたのだろうか。それで涙が出てこなかったのだろうか。


*言葉の窓*
「流すなら血よりも涙」
 イタリアのことわざらしい。いつまでも争い、血を流すよりも、泣いて終わりにしたほうがいいという意味かな!? 真意はわからないが、そう解釈したい。


 

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