ひそかに小指を見つめる
ここのところ火曜日の夜、横浜帰りの電車内で、へっ!? と思うことが続いている。
先週は、足を踏まれた話し。(のんきにしてもいられない)
今週は、小指にまつわる話だ。
*
日暮里で、20時41分発ちとせ行(京成線)に乗る。開いた席めがけ、スススーーと、人波をくぐりぬけ座る。
隣の席に、坊主頭の、ちょっと見、俳優の奥田英二(名前の字が間違ってるかも…)のようなしぐさで、斜にかまえ、脱力状態で足を組む男性がいた。(40代かな。)
どっか、具合が悪いのか、ふう~、ふう~、う~、と2~3分に一度、低く息をもらしていた。
こちとらは、カタンコトンと揺れる車内であくびをし、今夜は足を踏まれることもなく、ヤレヤレと思いながら、ペットボトルの入った袋を取り出そうと、目を下に向けた。
と、そのとき、気づいてしまった。
男性の右手の小指、第二関節から先がないことに。
事故でなくしたようには見えない。あぁ~、この奥田風男性は、きっとヤクザさんにちがいない。
ずいぶん昔、刺青の人は見かけたことがあるけれど、こんなに間近で、小指の先がない人を見たのは、これが初めて。
見たということを気づかれないように、犬が気持ちを落ち着けるときみたいに、大きなあくびを何度かした。
奥田風さんは、以後、右手を出さず、左手で携帯をとり、電話をかけた。
ふだんなら、あの‐‐‐、電車内での携帯はご遠慮ください、なんていうのだろうが、小心者のマーニャは、息をひそめ、耳をダンボのようにしていた。
「お~、大丈夫か~。お金はあるのか?タクシーにでも乗れよな…。」
子分に話してるのかな、いや、もしかしたら、可愛い妹かも…。
電車を降り際、ふいと、奥田風さんの顔を横目で盗み見た。
目は、ラブラドールのワンちゃんみたいだった。
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